ウクライナ軍によるロシア西部クルスク州への越境攻撃は16日で11日目となった。
戦況の実態が見えにくい中、ウクライナ兵の掃討作戦に前線で参加するロシア南部チェチェン共和国から支援している
特殊部隊「アフマト」
のアプティ・アラウディノフ司令官が連日、国営テレビに出演し、事実上のスポークスマンになっている。
ロシア側の戦果を強調する発言内容には
現実を反映していない
との指摘もある。
アラウジノフ氏は4月、プーチン大統領から国防省の軍事政治総局の副局長に任命され、司令官を兼務している。
クルスク州での戦闘を巡る発言は、国防省の公式発表より一貫して踏み込ん打内容だが、虚偽の情報を用いた工作の可能性もある。
ウクライナが14日に制圧を発表した同州の人口約5000人の町スジャを巡っては、公式発表がない中でアラウジノフ氏は14日も15日も「ウクライナ軍は全面的に制圧できていない」と主張したうえ、ロシア軍が戦況を安定させ、各地で敵を撃退していると発信している。
なお、ウクライナのロシア本土のクルスクへの進攻後、ロシアがウクライナの従来の戦線で攻撃を強めており、東部戦線の主戦場であるドネツクで、ロシア軍が
主要な要衝地であるニューヨークを占領
したと発表するなど、ドネツク全域がロシア軍の占領にさらされる可能性が高くなった。
ロシア国防省は20日
ロシア軍中央戦闘軍団
がニューヨーク(ロシア名ノブゴロドスケ)を陥落したと発表した。
ニューヨークはドネツクの人口密集地であるトレツクの主要な街であり兵站の中心地にあたる。
ロシア国防省は「中央戦闘軍団の部隊が積極的な作戦の結果、敵の大部隊を粉砕し、トレツクの主要な街でありドネツク人民共和国の戦略的に重要な兵站の中心地であるノブゴロドスケを解放した」と発表した。
ニューヨークはドネツクの炭鉱都市であるトレツクの南に接しており、ロシア軍は前日、トレツク東南部のザリズネも占領したことを明らかにした。また、この日のロシア軍の中央戦闘軍団による攻撃で、ウクライナ軍で死傷者585人が発生したと主張した。
ウクライナ独立後、米国のニューヨークに従って改名されたこの街は、規模は小さいもののロシア軍がここを占領した場合ドネツクの主要な拠点都市であるトレツクとポクロフスクに進軍出来るといった大きな進展となる。
ロシア軍は現在、ポクロフスク郊外の10キロメートルまで進攻した。
ウクライナ当局は前日、ポクロフスクの住民たちに疎開令を再発令するなど、先週半ばから住民たちを避難させてきた。
ロシア軍がポクロフスクとトレツクを占領すれば、ドネツクで人口が密集する地域のほとんどを占領する戦果となる。
この両都市の西側は人口が少なく、自然や人工的な防衛施設はない。
そのため、ドネツク全域がロシア軍の占領にさらされる。
なお、ウクライナ軍では、ロシア軍がニューヨークとその近隣を攻撃しているとだけ明らかにし、ロシア軍のニューヨーク占領を認めていない。
英国BBCによると、ウクライナ軍は
ザリズネ
を奪還する戦闘を引き続き行っており、地域の消息筋はニューヨークの20%を今でも統制していると伝えている。
ロシア国防省はこの日さらに、北部、西部、南部の戦闘軍団も過去24時間にそれぞれウクライナ軍数百人に被害を与え、各種兵器を破壊し進攻したと主張している。
ウクライナ戦線でロシアの進攻は、6日のウクライナによるロシア本土のクルスクへの進攻後、激しくなった。
ドネツクなどから精鋭の兵力を引き抜いてロシアに戻し、ウクライナが支配しているクルスク戦線に投じ、従来の戦線で防衛力が弱まったためと西側の軍事分析家は指摘している。
ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官はこの日、クルスク作戦が現在国境内部の28〜35キロメートルまで進展し、93の集落を含む1263平方キロメートルを占領したと主張した。
一方、ロシアのアンドレイ・ベロウソフ国防相は、クルスクとベルゴロド、ブリャンスクの国境地帯で、ウクライナ軍の作戦を防ぐ3つの新たな部隊が編成され、反撃作戦が進んでいると反論して見せた。
クルスクでの戦闘に投入されたチェチェンのアフマト特殊部隊のアプティ・アラウディノフ司令官はロシアメディアに、クルスクでウクライナ軍が非常に深刻な損失を被ったと主張した。
アラウディノフ司令官はまた、ウクライナがクルスクで破壊した橋梁は「何の意味もない」と主張して、その戦術的価値を一蹴した。
前日にロシア国防省は、クルスクに侵攻したウクライナ軍3800人が戦死したと主張した。
これが事実であれば、現場の映像があるだろうが、口頭のみで映像の提供はいまのところない。