FOXニュース(FOX News Channel 略称:FNC)
米国のニュース専門放送局で保守的・共和党寄りの報道機関のひとつ。
2000年代前半には視聴率競争でCNNを抜き、「FOX効果」が注目された。
1996年にオーストラリア出身の
が所有のニューズ・コーポレーション(現:フォックス・コーポレーション)が、当時NBCの経営者
ロジャー・エイルズ
を社長にして設立した。
マードック社主の意向もあってアメリカ同時多発テロ事件を機に
愛国心一色の報道姿勢
を明確にした。
テレビ画面に放送局のロゴが表示されるが、終日星条旗を流した。
同時放送していた地上波のFOXテレビ(同じくニューズ・コーポレーション傘下)も右に習った報道を行ったことでも知られる。
また、アンカーはみな星条旗バッジを身に着けた。
FOXニュースが1996年10月7日の放送開始時した時には1700万世帯という状態だったが、放送契約を結んだケーブルテレビに奨励金を支払うというキャンペーンを行い、視聴可能世帯を増やしていった。
アメリカにて8000万のケーブルテレビと衛星放送加入者に視聴されており、海外でも視聴できる。
2005年にラジオ局「Fox News Talk」を衛星ラジオで開始した。
また、2007年に経済ニュース「Fox Business Network」を立ち上げた。2008年からハイビジョン放送を開始した。
主にニューヨークのスタジオで制作されている。
創業時から長年に渡って、他の報道機関においての「リベラル偏向」に対抗して、中立報道を心がけているとFOXニュースは主張してきた。
スローガンは「Fair and Balanced(公平公正)」と「We report, You decide(我々は報道する、判断するのはあなた)」で、日本の公共放送をはじめとする報道機関が、おこがましい「教えてやる」という思考の下で「世界の常識」などといった題目で偏向的な情報を選別し組み立てて誘導誘導し続ける姿勢とは表面的には異なる。
トークラジオ形式の番組や派手なグラフィックや効果音を多用するなどしたニュース番組が人気となり、1990年代末からCNNから視聴者を奪い始め、2000年からCNNと視聴者数で拮抗した。
その後、2001年のアメリカ同時多発テロ事件を機に視聴者数で首位の座に立った。
2016年7月、初代最高経営責任者(CEO)を務めていた
ロジャー・エイルズ
にセクシャルハラスメント疑惑が浮上し、辞任した。
同年夏頃に長年掲げていた
「Fair and Balanced(公平公正)」
のスローガンを降ろしていたことが翌年(2017年)6月に報じられた。
2017年、セクハラの口止め料として5人の女性に対して1300万ドルあまりを支払っていた問題で4月20日、FOXニュースの人気番組『オライリー・ファクター』の司会者である
ビル・オライリー
がFOXニュースに復帰しないことで合意したと親会社の21世紀フォックスが発表している。
2018年12月27日週の総視聴者数で154万人を記録し18年ぶりに首位から陥落した。
日本では1997年8月1日、パーフェクTV!(現:スカパー!プレミアムサービス)でニューズ・コーポレーション(現:ウォルト・ディズニー・ジャパン)とソフトバンクが立ち上げた衛星放送プラットフォーム「JスカイB」系の番組供給会社・スカイエンターテイメント(現:ジェイ・スポーツ)で放送を開始したが、2004年7月31日をもって日本での放送を終了している。
イラク戦争ではサブミナル効果とも言える手法でテーマ曲を勇ましいマーチにしたり、米軍がイラク大統領官邸に突入する模様を独占中継に成功、退役軍人をコメンテーターに起用する(これはどこも同じ)などの姿勢を続けた。
この手法が奏功してイラク戦争はFNCがCNNより多くの視聴者を獲得したとも言われている。
ブッシュ政権時には政権や共和党と強いつながりがあり、正・副大統領を含めブッシュ政権の閣僚などがよく出演していた。
狩猟中に誤射事件を起こした副大統領
リチャード・チェイニ
ーが事故後最初に同ニュースにテレビ出演した。
なお、トニー・スノー元大統領報道官(en:Tony Snow)はFOXの元キャスターであった。
その後、民主党のバラク・オバマ政権発足後も視聴者数は伸び、オバマ政権に対する批判の急先鋒を担った。
これはMSNBCが2006年からブッシュ政権を批判したことと逆の現象ともいえる。
これらについてオバマ政権のコミュニケーション担当責任者
アニタ・ダン
は2009年10月、「FNCは事実関係を無視し、ニュース報道を偽装した世論誘導を行っている」と非難している。
基本的には記者取材のほか、全米のFox加盟局、イギリスSky Newsなどと連携して速報体制を敷いているものの、キャスターやコメンテーターのキャラクターが前面に出ており、記者の取材情報の影は薄い傾向が見られる。
そのため、情報の裏付けが乏しい伝聞やデマに対するチェック体制が甘いとされ、他のメディアに比べ物議を醸す報道も多い。
オバマ大統領がインドネシア時代に通っていた学校ではイスラム過激派の教育を行っていたという放送を行った。
しかし、CNNがジャカルタの特派員に取材させたところ誤りであった事が判明し、根拠なき情報を垂れ流し他情報の裏付け取材の乏しさに対し、「FOXは取材すべきだ」と苦言を呈された。
トランプ政権時にはドナルド・トランプは、自身への報道の大半を
フェイクニュース
として切り捨てた。
大統領に就任して以降、好意的な報道が多いFOXニュースを除く各マスコミに対して冷淡な姿勢を取った。
また、報道各社を集めた記者会見を事実上中止した以降も、ホワイトハウス報道官がFOXニュースに対して独自に会見を行うなど比較的優遇された立場を取り続けた。
2020年アメリカ合衆国大統領選挙に向け行われた民主党全国大会に合わせて民主党を批判する論調の報道を行い、民主党寄りのニュースを流すCNNなどと一線を画した。
一方で大統領選挙の開票速報では他局より3時間先行して激戦州であるアリゾナ州で民主党候補の
ジョー・バイデン
が勝利する見込みだと報じ、バージニア州についてもバイデンが勝利するとCNNよりも5時間前に伝えるなど、他局に比べても数時間早かった。
2020年の大統領選挙時には投票集計システム提供企業
ドミニオン・ヴォーティング・システムズ(ドミニオン)
が選挙不正に関わったとする報道を行ったため、2021年にドミニオンより名誉毀損で
16億USドルの損害賠償
を求める訴訟を起こされた。
この選挙不正疑惑についてはFOXニュース内部でも疑問視する声が多いことが訴訟の過程で明らかとなりFOXニュースの報道に批判が高まり、2023年4月18日にFOXニュースは
これらの報道について誤りであったこと
を認めると共に
7億8750万USドル(約1050億円)
を支払うことでドミニオンと和解したと発表し、FOXニュース側が事実上敗訴した。
この和解は公表されている中でのメディア企業の和解額としては米国史上最大となった。
また、和解後の声明でFOXニュースはドミニオンに関する主張の一部が虚偽であったことを認めた。
ひとこと
日本のメディアが誤報道などで単に頭を下げるだけで金額的な負担をほとんど負っていないためだろう、やたら醜聞が繰り返される状況では信頼性などない腐った情報の垂れ流しが現実だ。
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