ウクライナ軍が同国東部ドネツク州で、ロシア軍の損害を徐々に拡大させている。
なお、全体の戦局は膠着状態が続いているが、同州では占領地域を拡大して前進を図る露軍に対し
戦略的要衝
を重点的に防衛する守勢作戦で露軍の戦力を消耗させている。
ウクライナ側は自国軍の戦力回復を図り、将来の反撃につなげるとの戦略だ。
ウクライナ軍参謀本部や露国防省、米シンクタンク「戦争研究所」などによると、現在の激戦地は
ドネツク州チャソフヤル
同州ポクロフスク
同州リマン
東部ハリコフ州クピャンスク
同州ボフチャンスク
南部ザポロジエ州ロボティネ− など
の各方面にある。
中でも露軍の攻勢が最も激しいのはドネツク州で、ロシア軍は2014年以降、州都ドネツクを含む州の主要部を実効支配してきた。
22年2月の全面侵攻後は州全域の制圧を主目標としてきた。
現時点で同州の6割超を支配する露軍は、チャソフヤルやポクロフスク、リマンを制圧した。
ウクライナが保持する主要都市クラマトルスクやスラビャンスク方面への進出ルートを確保する戦略で一進一退の消耗戦を続けている。
露国防省は過去1カ月間でドネツク州の集落約10カ所を制圧したと主張して同州での優勢を誇示した。
露軍は兵力的に優位にあり、滑空爆弾(遠距離から目標を攻撃できる航空機投射型の爆弾)でウクライナ軍陣地を破壊している。
一方、ウクライナ軍は進軍を図る露軍の地上部隊や戦車などを火砲やドローン(無人機)で迎え撃つ戦術を展開している。
このため、露軍はドネツク州での前進するごとに、かなりの損害を出している。
英誌エコノミストは7月、露軍では戦車の損耗が深刻化し、対露経済制裁で再生産や修理も困難になっている。
そのため、今後戦力の低下が進むとする米英専門家の分析を報道している。
英国防省は、露軍の5、6月の1日当たりの平均死傷者数がそれぞれ1200人、1100人を超え、侵略開始後で最高水準になったと報告した。
一時停滞した欧米諸国からウクライナへの軍事支援は再び活発化している。
ウクライナに供与された米戦闘機F16も近く稼働する見通し。
ウクライナ軍はF16で滑空爆弾の脅威を低下させて重要防衛線を維持しつつ、追加動員などで戦力を回復し、将来的な反撃の機会をうかがう構想を描いている。
欧米軍事専門家の間では、少なくとも短期的に露軍がウクライナ軍の重要防衛線を突破し、決定的な勝機を得る可能性は低いとする見方が支配的だ。
ひとこと
兵站線が伸びてきており、物資供給の拠点を制圧してしまえば、逆にロシア軍は孤立し崩壊する事になりそうだ。
指揮系統が崩壊して、逃げ戻るロシア軍を殲滅していくことも可能となるだろう。