イーガンズ・ラッツ（Egan's Rats）ミズーリ州セントルイスで1890年から1924年まで大きな勢力を誇った米国の組織犯罪集団

イーガンズ・ラッツ（Egan's Rats）

　1890年から1924年までミズーリ州セントルイスで大きな勢力を誇った米国の組織犯罪集団である。

　35年間にわたる犯罪活動には、酒類の密造、労働者への強要、有権者への脅迫、武装強盗、殺人などが含まれていた。

　イーガンズ・ラッツは主にアイルランド系米国人であったが、イタリア系やユダヤ系移民も数人含まれていた。

　特にマックス・「ビッグ・マキシー」・グリーンバーグが有名である。

　20世紀初頭にセントルイスで支配的な犯罪組織となり、市内最悪の

　　　政治テロリスト

として知られるようになった。

　ラッツは投票所で民主党の必要票数を絞り出した。

　選挙戦術に加えて、ラッツは組合破壊、武装強盗、鉄道からの窃盗にも関与した。

　1910 年代半ばまでに、ギャングは

　　　密造酒の製造

に手を染め莫大な資金を獲得した。

　1921 年までにトムとウィリー イーガンは死に、ギャング団のリーダーは

　　　ウィリアム "ディント" コルベック

に引き継がれた。

　イーガンズ ラッツはすぐにライバルの

　　　ホーガン ギャング

と戦争を始めた。

　彼らは、ウィリー イーガンを殺害したと疑っていた。

　よく知られた戦争でホーガンを破った後、ラッツは密造酒の製造ではなく武装強盗を主な収入源とした。

　1924 年 11 月、イーガン ギャングの主要メンバー 9 人がイリノイ州スタントンでの郵便強盗で連邦刑務所に長期収監された。

　イーガンズ ラッツの下級メンバー数名がセントルイスで活動を続けていたが、1925 年秋までに活動を終えた。
　刑務所から逃れたギャングのメンバーは、国中に散らばった。

　フレッド・「キラー」・バークが率いる元ラッツのメンバーの中には、

　　　聖バレンタインデーの虐殺

に関与した疑いがある者もいた。

　後に、ギャングのメンバーである

　　　レオ・ヴィンセント・ブラザーズ

が、1930年6月にシカゴ・トリビューン紙の記者

　　　ジェイク・リングル

の殺害で有罪判決を受けたとき、ギャングは注目を集めた。

　イーガンズ・ラッツは、セントルイスの川沿いの「ケリー・パッチ」地区に住む 2 人のストリート・タフ

　　　トーマス・「スネーク」・キニー

　　　トーマス・イーガン

によって 1890 年頃に結成された。

　地区から他のメンバーを募集して、ラッツはスリ、強盗、武装強盗として活動を開始した。

　ギャングはまた、選挙日に投票所で有権者を脅迫することで民主党の政治機構を支援した。

　キニーは、ギャングを政治への足掛かりとして利用した。

　彼は最初、ミズーリ州下院の第 4 区の代表を務め、後にミズーリ州上院議員を務めた。

　対照的に、トム・イーガンは古い地区に留まり、ますます勢力を増していたラッツのリーダーになった。

　1904 年までに、イーガンのラッツはセントルイスで最も強力なストリート ギャングになった。

　ギャングの基盤は、市内に点在する民主党政治クラブであった。

　ラッツのメンバーのほとんどは、いずれかのクラブに所属していた。

　イーガンと提携しているクラブには、

　　　ジョリー ファイブ

　　　クロス キーズ

　　　フレンドリー テン

などがある。

　このとき、イーガン ギャングの主なライバルは、第 22 区の暴力的な

　　　ボトムズ ギャング

であった。

　しかし、ボトムズ ギャングは警察官を襲撃するという過ちを犯し、すぐに消滅した。

　冷酷な殺人者であるラッツ ギャングは、結果に関係なく、誰でも暗殺するつもりで活動した。

　1909年6月7日、ラッツは、イーガンのギャング

　　　サム・ヤング殺害の罪

で裁判にかけられていたライバルのガンマン

　　　フレッド「イエロー キッド」モーレ

をフォー コーツ ビルで殺害した。　

　クロス キーズ クラブのリーダー

　　　ジョン「バッド ジャック」バリー

が 1910 年 2 月 24 日にノース サイドの法廷で

　　　ヘンリー・ディーデリクセン

に射殺され、ラッツは報いを受けた。
　1912 年までに、トム・イーガンは 300 〜 400 人の男たちからなる組織を率いていた。

　同年、彼はセントルイス・ポスト・ディスパッチ紙に衝撃的なインタビューを行い、自分の権力と裏社会での地位を誇示した。

　特に自動車整備士の

　　　フレッド・ヘッセ

の殺害は、ラッツの露骨なギャング行為を強調した。

　1913年11月7日の正午、何十人もの目撃者が、副巡査の

　　　ハリー・レビン

がオリーブ通り 2647 番地の前でヘッセを射殺するのを目撃した。

　フレッド・ヘッセは、

　　　15,000 ドルの鉄道詐欺

に関してラッツを「密告」した疑いがあった。

　多くの人がこの理由のない殺人を目撃したにもかかわらず、レビンは 1914年4月23日に無罪となった。

　スネーク・キニーが結核で死亡した後、トム・イーガンはギャングをより洗練された犯罪へと移行させた。

　トム・イーガンは、米国でアルコール消費が間もなく禁止されると推測し、セントルイスに酒類密輸ネットワークを構築した。

　1916 年初頭までに、イーガンズ・ラッツは弱体化した

　　　ボトムズ・ギャング

と戦争を始めた。

　主な原因は、不満を抱いたイーガンのギャングスター

　　　ハリー・「チェリーズ」・ダン

であった。

　彼は、トム・イーガンが投獄された弟のジョンをほとんど助けなかったことに腹を立てていた。

　ダンは 1916年1月8日にトム・イーガンの酒場で、イーガン・ギャングの元メンバーである

　　　ウィリアム・「スキッピー」・ローハン

を射殺しました。

　トムの弟ウィリーは、ダンの命を救うよう主張して成功した。

　ただ、その後、「チェリーズ」はボトムズ・ギャングに寝返った。

　1916年8月21日に本格的な戦争を引き起こし、イーガン・ギャングと同盟を組んでいたセミプロのボクサーで詐欺師の

　　　ハリー・ロマーニ

を殺害した。

　ウィリー・イーガンと彼の部下 4 人が、1916年9月 9日にタイポ プレス クラブで

　　　チェリーズ ダン

と対決した。

　ウォルター コステロとフランク "ガター" ニューマンが彼を射殺した。

　イーガン ギャングとボトムズ ギャングの抗争で、ハリー ダンの殺害犯 2 人を含む 12 人近くの命が失われた。

　禁酒法が可決されたにもかかわらず、トム・イーガンは酒類密輸組織の利益を十分享受できなかった。

　トムは 1919年4月20日に腎臓炎の一種であるブライト病で亡くなりました。

　1919 年にトム・イーガンが亡くなった後、イーガンズ ラッツは弟のウィリーに引き継がれた。

　残念ながら、ウィリーは兄のように生まれながらのリーダの素質がなかったため、ギャングの若いメンバーは落ち着きを失っていった。

　イーガンは長期的な利益のために密造ビジネスを拡大したいと考えていた。

　ただ、若いメンバーは武装強盗でより早く利益を得たいと考えていた。

　イーガンに反抗した「レッドホット」として知られるこれらの若いギャングたちは、銀行、装甲車、メッセンジャーを次々の急襲し強盗し始めた。
　1921年までに、不満を抱いたイーガンズ ラッツのメンバー

　　　マックス「ビッグ マキシー」グリーンバーグ

がウィスキーの出荷をめぐってウィリー イーガンを裏切った。

　この裏切りで、組織内部の争いは更に悪化した。

　裏切りの報復として、イーガンはグリーンバーグを殺そうとしましたが失敗した。

　この時点で、マックスは新しいライバルであるホーガン ギャングに寝返った。

　ホーガン ギャングは、イーガンの宿敵である

　　　エドワード「ジェリー ロール」ホーガン

が率いており、彼はミズーリ州副飲料検査官も務めていた。

　1921年10月31日、ウィリー イーガンはフランクリン アベニューの酒場の前で射殺された。

　警察ではホーガン ギャングが容疑者として有力視していた。

　1921 年にウィリー イーガンが殺害されると、

　　　ウィリアム「ディント」コルベック

がイーガンズ ラッツを引き継いだ。

　元配管工で第一次世界大戦の歩兵だったコルベックは、イーガンズ ラッツを率いてホーガンズに積極的に戦いを挑んだ。

　銃撃戦が街を襲い、ギャングと罪のない通行人が路上で殺された。

　イーガンズ ラッツとしての最優先課題はウィリー・イーガンの殺人容疑者を追跡することだった。

　ディント・コルベックが持っている情報では、

　　　ジェームズ（ジミー）・ホーガン

　　　ジョン・ドイル

　　　ルーク・ケネディ

がイーガン殺害の報酬としてそれぞれ1万ドルを受け取っていた。

　ドイルは1922年1月6日にセントルイス警察に射殺され、ルーク・ケネディは1922年4月17日にウェルストンで拘束された。

　ケネディは命乞いをしている最中に射殺された。

　ジミー・ホーガンは翌年のほとんどを潜伏して過ごした。

　1923年冬、イーガンとホーガンの抗争が再燃し、1923年2月21日にラッツがホーガンの弁護士

　　　ジェイコブ・マックラー

を殺害した。

　ラッツはまた、キャス・アベニュー3035番地にある

　　　ジェリー・ロール・ホーガン

の家を2度銃撃した。

　この時までに、世間の怒りは最高潮に達し、人々はギャング同士の撃ち合いを止めさせる方法を必死に考えていた。

　1923 年の春までに、ラッツは疲弊したホーガン ギャングに和平条約に署名するよう強要した。

　和平が成立したラッツは、ミズーリ州とイリノイ州で強盗と殺人の犯罪の波を起こした。

　ギャングは、自分たちの仲間を含め、自分たちに逆らう者には容赦なかった。

　その最中、コルベックはギャングの犯罪を続けた。

　セントルイス郡のマックスウェルトン クラブというロードハウスに本部を置くラッツは、収入源として武装強盗にますます目を向けるようになった。
　後に、このラットは 5 年間で現金と財産を合わせて約 450 万ドル相当を盗んだと推定されている。

　これらの銀行強盗は、情報提供者レイ レナードが割り当てた 1919 年から 1924 年の間にイーガンズ ラッツが実行した強盗のほんの一部に過ぎない。

　これまでのところ、彼らの最も有名な犯行は、1923年4月2日の朝、セントルイスのダウンタウンで、

　　　カッコー ギャング

から密告を受けて装甲郵便トラックを強盗したときである。

　ラッツはトラックを乗っ取り、現金 240 万ドルと譲渡可能な債券を奪って逃走した。

　1924 年、イーガンズ ラッツは壊滅的な打撃を受けることになる。

　投獄されたギャング メンバーの

　　　レイ レナード

は、命の危険を感じ、連邦検察官に協力し始めた。

　1924年11月15日、コルベック、ルイス「レッド」スミス、スティーブ・ライアン、デビッド「チッピー」ロビンソン、オリバー・ドハティ、フランク・ハッケサル、チャールズ「レッド」ランハム、ガス・ディートマイヤー、フランク「コットン」エップルシェイマーは、イリノイ州スタントンの郵便強盗で有罪となり、懲役 25 年の刑を宣告された。

　コルベックとその仲間の有罪判決により、イーガンズ・ラッツは解散した。

　刑務所に入らなかったギャングのメンバーは国中に散らばり、行く先々で大混乱を引き起こした。

　フレッド「キラー」バークが率いる元ラッツの一団は、アメリカ中西部で多数の強盗、誘拐、殺人を犯した。

　この一団は、1929 年にシカゴで起きた 7 人のギャングによる悪名高い

　　　バレンタインデーの虐殺

に参加したと言われている。

　バークは1928年と1929年に警官殺害に関与し、1940年に獄死した。

　もう一人の元ラット

　　　レオ・ヴィンセント・ブラザーズ

は、1930年にシカゴ・トリビューン紙の記者

　　　ジェイク・リングル

を殺害した罪で有罪判決を受けた。

　他の2人の元メンバー、ピートとトーマス・「ヨニー」・リカヴォリは「リバー・ギャング」を結成した。

　これはデトロイトの大規模な酒類密売ギャングで、デトロイトとオハイオ州トレドの両方で暗躍した。

　元ラットのエルマー・マックリンは、1931年2月にデトロイトのマフィアのボス

　　　チェスター・ラマレ

を殺害した。

　もう一人のレイモンド・「クレーンネック」・ニュージェントは、1928年にオハイオ州の警官殺害に関与した。

　1931年4月に姿を消し行方不明となった。

　1940年代初頭までに、コルベックと投獄されていたギャングのメンバーの大半は釈放された。

　彼らは、過去 20 年間で様変わりしたセントルイスに戻った。

　コルベックと他のギャングのメンバーは、力ずくで権力を取り戻そうとした。

　彼らのほとんどは、地元のマフィアのボス

　　　フランク・「バスター」・ウォートマン

のもとで働き、最終的に平穏に引退した。

　しかし、コルベックは 1943年2月17日にセントルイスの通りを運転中に機関銃で撃たれて死亡した。