マッツァレラ一族（Mazzarella clan）カモッラ一の中で最も有力なグループの一つ

マッツァレラ一族（Mazzarella clan）ナポリ市で活動するカンパニア地方のカモッラ一族である。

　歴史的に、カモッラーの中で最も有力なグループの一つと考えられている。

　ザザ一族の分家として1960年代に、

　　　チーロ・マッツァレッラ（通称「オ・シェローネ」）

　　　ジェンナーロ・マッツァレッラ

　　　ヴィンチェンツォ・マッツァレッラ

のラ兄弟によって設立された。

　ザザ一族は、マッツァレッラ兄弟の親戚である

　　　ミケーレ・ザザ

が率いていた。

　組織はタバコの密輸に専念するようになり、ボルゴ・サンタ・ルチアからポジリポ、バニョーリからポッツオーリにかけて拠点を築いた。

　マッツァレッラ一族は急速に成長し、チーロ・マッツァレッラの活躍でザザ一族から独立した。

　チーロ・マッツァレッラは1960年代以降、小型船を購入し、独自の密輸帝国を築くなど、起業家精神を発揮した。

　　　

　設立場所 イタリア、ナポリ、サン・ジョヴァンニ・ア・テドゥッチョ

　活動期間 1960年代〜現在
　活動範囲

　　カンパニア州ナポリのいくつかの地区 (サン ロレンツォ)。
　　スペイン、フランス、ペルーにも存在。
　犯罪活動　麻薬密売、マネーロンダリング、恐喝、密輸、殺人、売春、賭博

　
◯同盟

　・ルッソ一族（Russo clan）
　・カターニア・マフィア一家（Catania Mafia family）
　・ンドランゲタ（Ndrangheta）
　・南米の麻薬カルテル（South American drug cartels）
◯敵対勢力
　・セコンディリアーノ同盟（Secondigliano Alliance）
　・コンティーニ一族（Contini clan）
　・リッチャルディ一族（Licciardi clan）
　・マッヤルド一族（Mallardo clan）
　・リナルディ一族（Rinaldi clan）
　・デ・ルカ・ボッサ一族（De Luca Bossa clan）
　・ヴォッラーロ一族（Vollaro clan）
　・アプレア＝クッカロ一族（Aprea-Cuccaro clan）
　

　1970年代には、この組織は既にメディアから

　　　タバコ密輸の王

と呼ばれていた。

　1980年代から1990年代にかけては、特にコンティーニ一族との数々のカモッラ抗争に関与するようになった。

　1998年にはマッツァレラ兄弟の父

　　　フランチェスコ・マッツァレラ

が待ち伏せ襲撃に遭遇し暗殺されるなど抗争が激化し、数十人の関係者が死亡した。

　同年2月には、9日間で10人が殺害されるという事態に発展した。

　1980年代後半、マッツァレラ一族はミッソ一族とサルノ一族と強力な同盟を結成し、

　　　ミッソ＝マッツァレラ＝サルノ

と呼ばれ。

　この同盟は、リッチャルディ、マッヤルド、コンティーニのボスが率いる

　　　セコンディリアーノ同盟

の台頭に対抗するためであった、

　ただ、2008年にサルノ一族が崩壊したことでこの同盟は崩壊し、ナポリ東部郊外は新たな血みどろの戦争に突入した。
　1996年、ジュリアーノ一族のボス

　　　ルイージ・ジュリアーノ

の娘マリアンナは、ヴィンチェンツォ・マツァレッラの息子

　　　ミケーレ・マツァレッラ

と結婚した。

　この結婚は、1990年代にカモッラの2つの主要一族の関係を強化するきっかけとなった。

　この一族はリナルディ一族と長年にわたり対立した経過もあり、両グループ間の血なまぐさい抗争で数十人の死者を出していた。

　一族のペンティート（親族）による暴露によると、組織の創設者たちは親族関係にあり、マツァレッラ家は一見すると団結し一枚岩にみえるものの、実際には兄弟それぞれが一族が支配する複数の領土内で独自の影響力を持って活動していた。

　一族は事実上、3つの独立したグループに分裂していた。

◯チーロ・マッツァレッラ（Ciro Mazzarella）
　1940年4月2日、ナポリ生まれの

　　　チーロ・マッツァレッラ（通称「オ・シェローネ」）

は、ミケーレ・ザザの真の後継者と目され、シチリア・マフィア、特に

　　　カターニア・マフィア・ファミリー

と強い関係を持っていた。

　司法関係者によると、カターニア・マフィアの故ボス

　　　ジュゼッペ・カルデローネ

は、マッツァレッラの息子の洗礼式において名付け親を務めていた。

　「オ・シェローネ」は、

　　　マリオ・ファッブロチーノ

　　　アルフレード・マイスト

といったカモッラの他の有力ボスとも良好な関係を築いていた。

　また、彼は新カモッラ・オルガニザータの

　　　ヴィンチェンツォ・カシージョ

と行動を共にしていたことが目撃されている。

　実際、マッツァレッラは、

　　　ミケーレ・ザザ

がNF内で最高位を占めていたにもかかわらず、新カモッラと下士官との間の争いにおいて、どちらの側にも立たなかった。

　1990年代初頭、マッツァレッラは巨額の富を築いた。

　なお、1992年にナポリのカモッラ一族間の戦争に敗れた後、スイスへ移住することを決意した。

　ルガーノの物流拠点を拠点に、モンテネグロから輸入されたタバコの密輸で、誰もが羨むほどの経済帝国を築き上げた。

　1996年の議会調査委員会によると、マッツァレッラは真の違法帝国を率いていた。

　売上高は2000億リラ、月間純利益は60億リラ（現在の価値で440万ユーロ）以上だった。

　2002年にスペインで逮捕され、2006年に釈放後、ナポリに戻った。
　2018年9月2日、チーロ・マッツァレッラはナポリの高級住宅街ポジリポにある自宅の別荘で78歳で亡くなった。

　20世紀以降、この一族はフランスでも活動していることが知られている。

　2004年、組織の創設者の一人であるヴィンチェンツォ・マザレラがパリで逮捕された。

　マザレラはフランス国内でアフリカの犯罪者とダイヤモンドを取引していたと報じられている。

　2009年、1971年生まれのチロ・マザレラがドミニカ共和国のサントドミンゴで逮捕された。

　彼はドミニカ共和国で豪華な邸宅に住み、特に麻薬密売の管理を担う一族の指揮権を握っていた。

　スペイン警察によると、スペイン国内ではマルベーリャ、フエンヒローラ、サラゴサ、セウタで活動している。

　バルセロナを拠点とする一族の幹部の一人である

　　　サルヴァトーレ・サゾ

は、ペルーからヨーロッパへの大規模な国際コカイン密輸計画に関与し、カヤオ港の完全支配権を握ろうとしていた。

　彼の連絡先の1人は、ペルー最大の密売人の1人である麻薬王

　　　ジェラルド・オロペサ

であった。

　DEAによると、ザゾはペルーの港を経由してヨーロッパにコカインを輸送し、年間5億ドル以上を管理していた。
　反マフィア捜査局（DIREZIONE INVISCATIVA ANTIMAFIA）によると、この一族はアルバニアのマフィア組織と同盟を結んでいる。

　近年、ノーラ出身のルッソ一族の新たなリーダーたちも、マッツァレラ一族と同盟を結んだ。

　2019年にDIAがカモッラについて発表した報告書によると、マッツァレラ一族は創設者2人が亡く​​なったにもかかわらず、依然としてカンパニア州で最も有力な組織の一つであり、様々な地域で領土を支配し、多数のグループを影響力下に置いている。
　現在のリーダーは1971年生まれの

　　　チーロ・マッツァレラ・ジュニア

で、ナポリのメルカート地区を拠点に強力な組織を統率している。
　2025年1月、ナポリ地区反マフィア局（DDA）が主導した大規模な反マフィア捜査を受け、マザレッラ一族は再び注目を集めた。

　ナポリ港内で事業と貨物会社を経営する2人の兄弟が2022年に正式な告訴を行い、調査が開始されたこの捜査では、一族の関連組織による組織的な恐喝計画が発覚した。

　被害者によると、一族のメンバーは月額500ユーロに加え、前年分の「未払い賃金」として一時金を要求した。

　また、脅迫や暴力を用いて要求を強要していた。

　この恐喝は、被害者が港湾地域で事業を継続するために不可欠だったとされている。

　この事件に関連して、歴史上のボスであるヴィンチェンツォ・マザレッラの甥である

　　　ジェンナーロ・マザレッラ

と、カモッラ関連の犯罪で有罪判決を受けた

　　　サルヴァトーレ・バリレ

の3人が逮捕された。

　盗聴により、マザレラ一族がナポリ港だけでなく、サン・ジョルジョ・ア・クレマーノやポルティチといった近隣の町でも恐喝組織に影響力を持ち続けていることが明らかになった。

　傍受された会話の一つには、同一族の仲間である33歳の

　　　グスタボ・アレク・ノヴィエロ

がおり、必要に応じて最大300人の人員を動員できると話していた。

　これは、長年にわたる法執行機関からの圧力にもかかわらず、同組織が依然として力と影響力を維持していること見られる。
　2025年5月、イタリアのカラビニエリが実施した大規模作戦により、マザレラ一族と繋がりのある大規模な麻薬密売ネットワークが壊滅させられた。

　ナポリ地区マフィア対策局（DDA）の命令を受け、捜査官はマフィアとの繋がり、麻薬密売、違法武器所持、恐喝、マフィア的な脅迫などの罪で21件の逮捕状を執行し、19人の容疑者を投獄、2人を自宅軟禁とした。

　作戦の中心人物は「オ・フェノーメーノ」として知られる

　　　ミケーレ・マザレラ

で、シチリア島シラクーサで収監されていたにもかかわらず、一族を指揮し、広範な麻薬取引を監督し続けていたとされている。

　捜査官らは、彼の支配下にある2つの衛星グループを特定した。

　それぞれロザリオ・デ・ベルナルド（2015年に殺害されたヴィンチェンツォ「オ・ピセッロ」の兄弟）と

　　　ラファエレ・アナスタシオ

が率いており、両グループともベスビオ山の町ソンマ・ベスビアーナとサンタナスタジアで活動していた。
　デ・ベルナルド・グループは、大規模な麻薬密売の物流を管理し、主要な小売地区、特にソンマ・ヴェスヴィアーナのパルコ・フィオルダリーゾ地区でコカイン、クラック、マリファナ、ハシシを流通させていた。

　一方、アナスタシオ・グループは、再生可能エネルギー、レンタカー、葬儀サービスなどの分野の企業を含む地元の起業家に対する一連の恐喝行為を組織したとして告発されている。

　その目的は、グループの活動資金と投獄されたメンバーの支援だとされている。

　2024年を通して行われた捜査は、盗聴と秘密裏の監視に大きく依存していた。

　当局は、マザレッラの支配下でいわゆる「麻薬市場同盟」が設立され、すべての路上ディーラーは、自由に活動するために、グループから麻薬を購入するか、「平和税」と呼ばれる料金を支払うことを義務付けられていた。

　ネットワークの主導と構築の責任を問われているのは、

　　　サルヴァトーレ・ディカプリオ

　　　サルヴァトーレ・ジャンネッティ

　　　ファビオ・アヌンツィアータ

であり、作戦責任者は

　　　クレメンテ・コレアーレ

　　　カルメラ・ミランダ

　　　ロサリオ・デ・ベルナルド

とされている。

　逮捕された者全員は現在、予備審問を待っている。

◯歴代の首領　

　・チロ・マッツァレラ（Ciro Mazzarella　1940年4月2日 - 2018年9月2日）

　　　「オ・シェローネ（'o Scellone）」として知られる
　・ジェンナーロ・マッツァレラ（Gennaro Mazzarella　1949年9月25日生まれ）

　　　「オ・シッツォ（'o Schizzo）」として知られる
　・ヴィンチェンツォ・マッツァレラ

　　　　　(Vincenzo Mazzarella　1956 年 5 月 8 日 - 2018 年 11 月 5 日ミ)

　　　「オ・パッッツォ（ ‘o Pazzo）」として知られる
　・チロ・マッツァレラ （Ciro Mazzarella）1971 年 5 月 3 日生まれ)