ウィルフレッド・ジョンソン（Wilfred Johnson）ガンビーノ・ファミリーに所属、後にFBIへの情報提供者

ウィルフレッド・「ウィリー・ボーイ」・ジョンソン（Wilfred "Willie Boy" Johnson ）

　　　1935年9月29日 - 1988年8月29日

　米国の著名なギャングスターである。

　裁判資料と公判前証言によると、ジョンソンは1966年から1985年まで

　　　連邦捜査局（FBI）

の情報提供者であり、

　　　ジョン・ゴッティ

やガンビーノ・ファミリーの他の構成員に関する情報を捜査官に提供していた。

　しかし、ジョンソンと彼の弁護士は、彼が捜査官に協力したという主張を公に否定した。

　ジョンソンはブルックリンで車に向かって歩いている途中で射殺された。
　ジョンソンには4人の兄弟姉妹がおり、ブルックリンのカナーシーで育った。

　父ジョン・ジョンソンはネイティブアメリカンの血を引いており、

　　　国際橋梁構造装飾鉄筋工組合（IATR）

の建設作業員であった。

　母はイタリア系アメリカ人の主婦であった。

　両親はブルックリンのレッドフックに定住し、ウィルフレッド・ジョンソンはそこで兄弟姉妹と共に育った。

　ジョンソンの犯罪歴は、わずか9歳の時に始まった。

　当時はマーダー・インクのたまり場であった

　　　ヘレンズ・キャンディ・ストア

のレジから金を盗んだとして逮捕された。

　12歳の時、ジョンソンは喧嘩の最中に学校の屋根から転落、あるいは突き落とされた。

　この事故でジョンソンは頭部を負傷し、その後も頭痛に悩まされることになった。

　犯罪に手を染める前は、国際オペレーティングエンジニア組合（IUE）のクレーンオペレーターとして働いていた。
　若い頃のジョンソンは、体格がずんぐりとしていた。

　アラン・メイは、クイーンズ地区検事局所属の元ニューヨーク市警警部補

　　　レモ・フランチェスキーニ

の回顧録を引用し、ジョンソンについて「彼は非常にがっしりとした体格で、身長は約175cm、体重は90kgを優に超え、まるでプロレスラーのようだった。

　首回りは21インチ（約60cm）、しゃがれた声だった。

　ウィリー・ボーイに街で会うのは避けたいところだった。

　もし会ったら、ポケットに予備の弾薬を忍ばせておくべきだった。

　6発の弾丸では、この男を止めることはできないからだ。

　彼は、撃たれると胸に詰まった弾丸をひきちぎろうとし、その後激怒するような男だった。」

　「俺を撃ったのか？ こいつ、とんでもない目に遭うな」と描写している。

　これがジョンソンをマフィアの取り締まり役へと導いた。

　1949年までに、彼はイースト・ニューヨークで不良グループを率い、債務者にマフィアの借金を強引に返済させていた。

　1957年、ジョンソンは

　　　ジョン・ゴッティ

と初めて出会った。

　ゴッティは17歳の高校中退者で、ジョンソンは常に法に触れている不良であった。
　ゴッティがガンビーノ・ファミリーに加わると、ジョンソンも同行した。

　ジョンソンは強引な手腕から「ターミネーター」として知られるようになった。

　安定した収入が必要だったジョンソンは、そこそこ成功している賭博事業を任された。

　ジョンソンは一族の裏切り者のイタリア系ハーフだったため、成り上がり者とも呼ばれる幹部になれるメイドマンになることはなかった。

　ただ、一族の他の誰よりも金を稼いでいた。

　ジョンソンはネイティブアメリカンの血を引くため、FBIのコードネームで「ワフー」と呼ばれていた。

　1966年、ジョンソンは武装強盗で投獄された際、ガンビーノ・ファミリーに反旗を翻したとされている。

　彼のカポレジーム（執事）である

　　　カーマイン・ファティコ

は、ジョンソンの妻と幼い二人の子供を経済的に支援することを誓ったが、すぐにこの約束を履行ぜずに放置して破った。

　ジョンソンの服役中ずっと彼に忠実だった妻は、生活保護を受けることを余儀なくされた。
　ジョンソンはめったに自ら情報を提供することはなかったものの法執行官からの直接の質問には答えていた。

　FBIの担当者である

　　　マーティン・ボーランド特別捜査官

は、FBI内の様々な組織犯罪対策班や麻薬取締局（DEA）からの質問を提出していた。

　1967年、FBIの尋問中に、ジョンソンがマフィアに不満を抱いていることが捜査員の誰かに見抜かれた。

　釈放後、FBIは彼に情報提供者にならないかと持ちかけた。

　当初は乗り気ではなかったジョンソンだが、政府が見返りとして

　　　偽造容疑の一部を取り下げる

との条件で、ついに情報提供に同意した。

　ジョンソンはまた、ガンビーノ一家の

　　　不正行為への報復

も望んでいた。

　1978年、ジョンソンはボーランドに、ルッケーゼ一家のボス

　　　ポール・ヴァリオ

のハイジャック本部の所在地を密告した。

　当時、本部は

　　　クライド・ブルックス

が所有するスクラップ置き場を拠点としていた。
　ジョンソンは情報提供者ではあったものの、友人のジョン・ゴッティについて語る際にはいつも慎重だった。

　ジョンソンとゴッティは奇妙な関係にあり、ある時ボーランドに「彼を愛する時もあれば、憎む時もある」と発言した。

　ジョンソンは時折ほのめかす程度で、それ以上詳しくは語らなかった。

　そのほのめかしの中には、ゴッティのギャンブル依存症に関する不満も含まれていた。

　ジョンソンによれば、ゴッティは週に10万ドルもの賭け金を賭けていたという。

　ジョンソンは、その賭け金の一部は彼のささやかな賭博事業で回収され、損失を被らざるを得ないと不満を漏らした。

　またある時は、ジョンソンはゴッティについて「あの男は今は高価なスーツを着ているが、相変わらずくだらないことを言う。相変わらず雑種犬だ。あの滑らかな外見に騙されてはいけない」といった辛辣な言葉を投げかけていた。

　ジョンソンの苦々しい感情の根底には、忠実な奉仕にもかかわらず、

　　　カーマイン・ファティコ

のクルーたちの中で常に劣等な立場に置かれていることへの憤りがあった。

　ジョンソンは、ファティコとゴッティが常に自分を下働きのように扱うことに「彼らは今でも私を雑用係とみなし、盗品を扱わせるんです」と明かすなど憤慨していた。
　ジョンソンはかつてボランドから「緊急個人融資」として100ドルを借り入れたことがある。

　ただ、これはすぐに返済され、ボランドは「賄賂」の申し出を断った。

　しかし、ジョンソンはFBIから金銭的な報酬を受け取っていなかった。

　ただ、ある程度の利益は得た。

　彼の情報はFBIの大規模なハイジャック事件の解決に役立ち、保険会社が盗難品回収に多額の報奨金を提示した事件では、FBIはジョンソンがハイジャック品回収の直接の責任者であったことを証明する

　　　秘密の宣誓供述書

を提出した。

　ジョンソンは報奨金を受け取った。

　ある事件では、大規模な積荷の回収で3万ドルを受け取った。

　情報提供者としてのジョンソンは、前述の偽造容疑を除き、FBIの介入によって刑事告訴の軽減や取り下げを求めることはなかった。

　1985年までの16年間、情報提供者として活動していたジョンソンは、自身が協力していた様々なニューヨーク・マフィアの組織に関する情報を提供した。

　FBIはその情報を用いて多くの逮捕に成功した。

　ただ、FBIの担当者である

　　　マーティン・ボーランド特別捜査官

が気づいたように、ジョンソンは自身の経歴や幼少期について詳細に話すことを拒否した。
　ジョンソンが提供した最も重要な情報の一つは、

　　　ヴァリオ・クルー

がいかにしてFBIの盗聴や盗聴器を回避していたかという点だった。

　クルーはブルックリンにあるポール・ヴァリオ所有の廃品置き場に駐車していたトレーラーを使用していた。

　ジョンソンはまた、ジョン・ゴッティらが運営する「プレザント・アベニュー・コネクション」と呼ばれる大規模な麻薬組織に関する情報をFBIに提供した。

　ゴッティと

　　　アンジェロ・ルッジェーロ

がフロリダのギャング

　　　アンソニー・プレート（Anthony Plate）

を殺害した事実、そして

　　　エマニュエル・ガンビーノ

を誘拐した

　　　ジェームズ・マクブラトニー

の殺害に関する詳細も明かした。

　1985年、ジョンソンの情報提供者としてのキャリアは同年の公聴会で、連邦検察官

　　　ダイアン・ジャカローネ

が、ジョンソンがFBIのために働いていたことを暴露し突如として幕を閉じた。

　ジョンソンに司法取引を持ちかけて誘導し、ゴッティに不利な証言をさせようとした。

　ジョンソンのFBI担当者は彼に

　　　証人保護プログラム

に参加するよう説得した。

　しかし、彼はこの話を拒否し、情報提供者であることを公に否定した。

　これにより、FBIとジャカローネの間のすでに緊張していた関係が崩壊し、FBIはゴッティ事件への関与をやめることとなった。
　1988年8月29日、ボナンノ家の殺し屋

　　　トーマス・ピテラ（Thomas Pitera）

　　　ヴィンセント・「コジャック」・ジャッティーノ

　　　　　　　　　　　　　　（ Vincent "Kojak" Giattino）

は、ブルックリンの自宅前でジョンソンが車に向かって歩いているところを待ち伏せし、射殺したとされている。

　銃撃犯らはジョンソンに向けて19発の銃弾を発射した。

　ジョンソンは両大腿部に1発ずつ、背中に2発、頭部に少なくとも6発の銃弾を受けた。

　その後、殺し屋たちは追跡を阻止するため、ジャックのような鉄球を路上に落とした。

　ピテラはゴッティに便宜を図ってこの行為を行ったとされている。

　1991年、ピテラは1980年に隣人の

　　　ジョン・ファヴァラ

を殺害したとしてジョンソンを告発した。

　ファヴァラはゴッティの12歳の息子を車で誤ってはねて死亡させた。

　1992年、ピテラとジャッティーノはジョンソン殺人罪で起訴され、裁判にかけられた。

　ジャッティーノは有罪判決を受けた。

　ピテラは無罪となったが、後にさらに6件の殺人で有罪判決を受けた。

　ジョンソンはニューヨーク州クイーンズ区ミドル・ビレッジのセント・ジョン墓地に埋葬されている。